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EP

EP0.???

シーンプレイヤー:???

 

 

 

 宛先:群馬県館林市

 茂林坊唐竹様


連日厳しい暑さが続いておりますが、いかがお過ごしですか。


――堅苦しい挨拶は苦手だからここからは口語で書き連ねるとする。

手紙の作法は理解しているつもりだ。書きなれていないため何度も挑戦したが、
上手くいかなかったので許して欲しい。
以前、塵から教わった妖怪ポストであれば、そちらにも早く届くだろうか。

まだ盆なのだから、届いてほしいと私は願う。

さて、あの時手紙を頂いた内容を、落ち着いた頃にしっかり読ませてもらった。

実にあなたらしい手紙だと思った。

あなたが私に返信することはきっと叶わないだろう。

思いを伝えるのは文字から。私はあなたの気持ちを素直に受け取る。

私は、恋文を貰ったことに対して嬉しいという感情を抱いた。
しかし恋心というものはよく分からない。
妖魔に心はあるのだろうか。それは芽生えるのだろうか。

もし生まれ変わる日が来たとしたら、文通からはじめてみたい。

そして私は理解していきたい。
あなたという存在、私という存在、彼らという存在を。
私はそのときまで生きている。私はそれを契約――約束しよう。

ここまで手紙を書き続けたのだから、何となく察して欲しい。
私はあなたのことが――――

――嫌いではない

いや、愛に囚われた女と気取る心算はない。
私は私という存在であって、そうでないものだ。
これは私の意志からの精一杯の返答だ。

いつか私はあなたにそれを伝えたい。


では、いつの日かこの手紙があなたに読まれることを祈って。

 

 文車妖妃

2015 Eiya

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